2013年3月19日星期二

【経営】【転載】社員の給料を思い切りカットできるか




技術と全く違う話しだったが、読んだら、なるほどと思ったので、一応転載させて頂きます。

 マーケティング課長として高い給与を約束してヘッドハンティングしたものの、全然アイデアを出さずにブラブラしている社員がいる。もう我慢の限界だから給与を半分にカットしたい――。そんな経営者からの相談が少なくない。

 高給ぶら下がり社員の給与をカットしようとする場合、まず検討するのが個別同意である。労働契約法の第8条で労働者と使用者は合意により契約内容を変更できると規定されている。実務上は文書化が必要だ。

 これに基づいてマーケティング課長と覚書を交わし「2012年の12月度から月給を100万円から50万円に変更することに合意します」とお互いにサインすれば、基本的には給与を引き下げられる。

 しかし「私はちゃんと仕事をしています。まだ結果が出ていないだけです」と拒否されたら、個別同意による給与カットはできない。

 拒否されたら就業規則の降格規定に基づいて給与の引き下げを検討することになる。ややこしいが降格には狭義の降格と降職があり、それらを実施して給与をカットするのだ。

 狭義の降格による給与の引き下げとは、職能資格制度を採用している企業の場合、上級職1級を2級に降格するというように、職能等級を下げることで給与をカットすることを指す。一方、降職とは部長を課長にするというように、職位を引き下げることである。降職による給与の引き下げは、たとえばマーケティング課長から係長に降職させることで、5万円だった課長手当を3万円の係長手当にするというやり方で給与カットを行うものである。

 また外資系に多い、仕事の内容とポジションによって給与が変わる職務給制度を採用している企業なら、マネジャーからアシスタントマネジャーへ降格するといった形で給与を引き下げられる。
 社員の給与を引き下げる方法には以上のようなやり方があるが、実際にはどれもハードルが高い。

 まず個別同意だが、給与カットというマイナスの話で本人の同意を得ることは困難である。まして書面にすることは非常に難しい。実態としては社長が社員へ一方的に給与カットの話をして「じゃあ、そういうことで」で済まそうとするようなケースが多い。こうした場合、往々にして後でトラブルになる。

 降格による給与カットは、そもそも就業規則に降格規定がなければお話にならない。なければ規定をつくるところから始める必要がある。

 降格規定があっても引き下げ金額が大きいと、裁判になるとストップをかけられる。実際に社員の給与を約5割カットしたところ裁判になり、「社員が生活できなくなる」との理由で会社側が負けた判例がある。降格規定をつくっても、引き下げ幅は我々の感覚だとせいぜい1年に1割が上限だ。

 加えて、降格や降職には明確な根拠が必要であるが、「この人は仕事ができない」と証明するのは意外に難しい。営業のように成果が数字で表れる仕事でも、担当エリアや客層によって、能力不足といえるかどうかは微妙だったりする。

 したがっていきなり降格や降職に踏み切るのではなく、本人の意見や同じ部署、他の部署の意見を聞いて、降格や降職の判断を行う仕組みをつくったうえで、社員の生活に支障のない範囲で給与を引き下げるように、丁寧に段階を踏んで進める必要がある。

 やりたい放題に給与カットや降格を行っている経営者を見かけることがある。しかし、そうした扱いを受けた社員が労働組合に駆け込んだことを知り、あわてて我々のような経営者側に立つ弁護士へ相談に来られても、時すでに遅し、もはやお手上げである。